そして、ねずみ女房は星を見た

slowlearner_m2010-07-11



ゲド戦記』の翻訳者としても知られている清水眞砂子さんの『そして、ねずみ女房は星を見た』(テン・ブックス刊)をこのところを読んでいます。たまたま読んだ『ゲドを読む』という小冊子(おそらくアニメの『ゲド戦記』が公開された時に配られたフリーペーパー)を読んで、中沢新一さんの解説も面白かったけれど、清水さんのインタビューにもとてもひかれるものがあって、読んでみたのです。



とてもいい本です。
13冊の子どもの文学について書かれたエッセイなのですが、どの本も読んでみたくなります。清水さんが、カニグズバーグの『ベーグル・チームの作戦』の章で書く、


「もっともすぐれた文学は、カニグズバーグの作品にかぎらず、本来実用に供するもの。それは「個々人が生き延びるための知恵の集積であると同時に、人類の愚かさの研究でもある」(島田雅彦)のですから」


という言葉通り、どの本についても〈実用に供する文学〉という視線を崩さず書かれたやさしいけれども、とてもしなやかな強さを持った文章です。

ラフィク・シャミの『片手いっぱいの星』(岩波書店刊)が読みたくなります。
清水さんが引用していたサリームじいさんの言葉に、ぐっときたのです。


「三百回だまされても、新しい友だちをさがしつづけ、あまり疑り深くならんことだ」
「いいか、この世の弱い者たちが、友情を見つけたんだ。力があるものには必要ない。友だちを見つけるんだ。吟味なんかせんでな。そんなことをしていると、人生で最大のまちがいをおかすぞ。つまりな。お前はさびしい人生を送ることになるんだ」


この本を読み終わったら、『片手いっぱいの星』は持っていないので、別の一冊アイザック・B・シンガーの『お話を運んだ馬』(岩波書店刊)を、まずは読み返すことにします。





明日は、スタジオで『ゲゲゲの女房』のクレジットの直し作業。夜は、『森崎書店の日々』の内覧試写があります。