猫返し神社〜『私は猫ストーカー』事始め〜その11
キャスト、スタッフ、ロケ地が決まり、いよいよ『私は猫ストーカー』も臨戦態勢に入ったのは、11月の下旬になった頃でした。主なロケ地は、谷中、根津、千駄木に加え、ヒロイン・ハルがアルバイトをしている古本屋さんは中野新橋にある古書猫額洞さんをお借りして撮影することになったのです。
キャストも決まりました。
ハル…星野真里さん
真由子…江口のりこさん
鈴木さん…宮崎将さん
猫仙人…品川徹さん
僧侶だと言ってハルを連れ回すおじさん…諏訪太朗さん
編集者…寺十吾さん
ハルの元カレ…岡部尚さん
チビトム…タラオくん
大家さん…麻生美代子さん
古本屋のご主人…徳井優さん
古本屋の奥さん…坂井真紀さん
お芝居の上手い、個性的なキャストになりました。猫率も高い現場です。うちに1匹、監督が1匹、脚本の黒沢久子さんが1匹、助監督の松尾くんが1匹、坂井さんが4匹の猫と一緒に暮らしています。
中でも品川徹さんと麻生美代子さんのキャスティングには、市川準監督作品のエコーがあるのかもしれません。品川さんは、大杉漣さんも所属し、太田省吾さんが主宰していた劇団転形劇場の名優でした。『小町風伝』『水の駅』などこの劇団の多くの作品を、かつて見ました。過去形で書いたのは、この劇団は今はなく、演出の太田さんも亡くなってしまったからです。市川監督の『BU・SU』に品川さんが出演しているのを見た時は驚愕しました。なぜこの監督は、この知る人ぞ知る名優を知っているのか、と…。市川監督が小劇場をマメにご覧になっていたのを知ったのは、ずっと後のことでした。
麻生美代子さんとお会いしたのは、市川監督の『あおげば尊し』をお手伝いした時でした。麻生さんは、舞台の女優さんであり、アニメ『サザエさん』のフネの声や、『ハイジ』のロッテンマイヤー先生の声などをされている声優さんでもあります。ほとんど映画にはご出演されない麻生さんは、この作品でテリー伊藤さんのお母さんの役を、とても真摯に、とてもチャーミングに演じられていました。だから、この大家さんの役を、是非とも麻生さんに演じていただきたかったのです。
現場での、鈴木卓爾監督、品川さん、たむらまさきキャメラマンです。
映画の中に「猫返し神社」が登場します。ハルは、古書店からいなくなってしまったチビトムを返してくれるように神社にお願いします。このシーンは西日暮里で撮影されましたが、本当の「猫返し神社」は、立川にある「阿豆佐味天神社」です。ジャズピアニストの山下洋輔さんのエッセイにも登場します。
http://www.azusami-suitengu.net/
ほんとうの「猫返し神社」の絵馬をお借りして、美術部が飾り、このシーンは撮影されました。
この神社を取材してくれ、“なんちゃって”制作部として動いてくれたTが、クランクインを前にして体調不良で戦線を離脱しました。残念です。鈴木卓爾監督は、それをとても悲しみました。T、たまにはこのブログ見てるかな?
早く元気になって戻っておいでね。