アンサンブルとサンフォード・マイズナー

slowlearner_m2011-02-23



先日のtokiで行われたイヴェントのトークの中で印象に残ったことがあります。
加瀬亮さんが、演技のアンサンブルについて語った部分です。アーカイブを見直した訳ではないので恐縮ですが、カサヴェテスの映画や、彼とピーター・フォークが参加した『マイキー&ニッキー』が演技のアンサンブルを映画にすることを追求した作品だとするなら、近年、彼が参加している映画においては演技のアンサンブルを追求することはなくなった、というような意味のことを話されていたと思います。

正確には日曜日まで、Ustreamアーカイブに映像が残っていますので、是非確認してみてください。


http://www.ustream.tv/user/slowlearner_99/videos


この発言は、いろいろ考えさせられるものありました。
先日も書きましたが、『マイキー&ニッキー』のイレイン・メイ監督は、マリヤ・ウスペンスカヤは、メソッド演技法として知られる演技法を教授し始めた人のもとで演技を勉強した女優でもあります。そして、この映画を見ていると、ピーター・フォークジョン・カサヴェテス、そしてその他の俳優たちとのアンサンブルを映画として掬いとることを目指した作品だということが言えると思います。

そして、カサヴェテスが監督作品もまた別の形で、映画の作り方から、俳優を含めた撮影チームのあり方、映画の隅々にいたるまで“アンサンブル”ということを追求した映画であると言うことができると思います。

『マイキー&ニッキー』でギャングのボスを演じているのは、サンフォード・マイズナーです。
演劇に詳しい方はご存知かもしれません。彼は、もちろん俳優であり、スタニラフスキーのシステムを実践しようとステラ・アドラーエリア・カザンなどが参加したグループ・シアターのメンバーであり、メソッド演技の教師としてダイアン・キートン、ドバート・デュバルをはじめ、彼は数多くの俳優を指導したメソッド演技の教師です。



メソッド演技に関して、深く言及することは、私には勉強不足でできません。
しかし、俳優としてアンサンブルを重視したこの演技システムを学んだ彼等は、おそらくその“アンサンブル”という考え方を、フレームの中にある演技の問題としてだけでなく、映画における様々なことの問題に応用して自分たちの映画を構想していたような気がします。



サンフォード・マイズナーの1年間のドキュメントである『サンフォード・マイズナー・オン・アクティヴ』(而立書房刊)です。

この“アンサンブル”という考え方は、とても重要だと思うのです。
そして“アンサンブル”という考え方が、今の映画の現場から失われているとしたら…。私たちはカサヴェテスの映画を自分たちの映画として観なかった、ということなのかもしれません。

“アンサンブル”とは何なのでしょう?