正津勉さんの追悼詩と

slowlearner_m2010-12-16



今日は、来年制作する映画の打ち合わせがあったり、『海炭市叙景』の新聞広告の進行があったりでバタバタでした。
そんな中で、先日試写にいらしていただいた詩人の正津勉さんから、『海炭市叙景』の原作である佐藤泰志さんへの追悼詩の掲載のご許可をいただきましたので、HPにも掲載させていただいたのですが、こちらにも転載したいと思います。正津さんは佐藤さんの生前にご親交があったとお聞きしています。

「ハードル」 正津勉


切れたくなる、プッツンしてしまいたく
いつかそれとしらなく、花と散らんとはかなわずば
煙と消えようというぐあい、いずかたへとなくと
そうまいれたらとおもっている、酔ったように


おもうにしかし、詮方ないことと考えるが
だけど好ましくないのは、事後のこともちゃんとして
万端のはからい、どこか当てつけがましげなきらい
大事めかした終りかた、といってわかるか


むしろ願わしくあるのは、どういえばいい
そうでなく発作的なやはり、気がついたときは
息がしないとき、しぜんにも偶然性をしてはたそう
さしずめこういう、こんなと浮かぶのだった


そうそれこそ、死亡欄でしるしかなかった
どれほど前になるか、ときにとくに親交はなく
もとより想像すべくもないが、いつかある晩あれは
雑木林にぶらさがった、ことはいたずらだ


のちになる一著をみて、うちの一篇のその
それに倣っていえば、さいごのこの跳びざまは
思惟を遠くこえてなくてか、――大きなハードルも
小さなハードルも、次々と跳びこえてみせる


*終行 佐藤泰志(一九九〇年十月十日縊死)「大きなハードルと小さなハードル」
 

詩集『笑う男』(邑書林 1995)所収


ゲゲゲの女房』に米屋役で出演してくれた渡辺謙作監督からもコメントが届きます。

海炭市叙景を観たあと渋谷から歩いて女の家まで行ってそこで初めて女を殴った。一発ぶったら一発返されたので今度はグーで殴ったら女が泣いて少し冷静になったら映画がやけにしみてきて泣きながら謝ってセックスした。俺も女も泣いて涙は海の味がした。海炭市叙景そんな映画。

映画監督(『フレフレ少女』『となり町戦争』) 渡辺謙作


ありがとうございます!

本屋さんの感想も続々届いているのですが、その中にこんな感想がありました。

足音、食べる音、飲む音、人が生活してる音が聞こえる。
都会やイヤホンをつけてると聞こえない、人が生きている音が聞こえました。

大盛堂書店(渋谷) 亀井真


こんなふうに映画をご覧いただいて嬉しいです。
鈴木卓爾監督と映画を作り始めた頃、監督が「すごく小さい音を増幅して大きな音で聞いているような映画を作りたい」と話していた事を思い出します。「人が生活してる音が聞こえる。」亀井さんの感想は重要です。そのような映画を作りたいと思っているのです。そして、そういう映画が好きだったはずなのです。




ドノバンだ…。