あるスーツの話

slowlearner_m2010-12-14



熊切和嘉監督作品『海炭市叙景』の公開が、今週末に迫って、なんだかドタバタしています。
夜は大抵ユーロスペースにいます。
書店員さん試写というのをやっているのです。
原作の小学館文庫の『海炭市叙景』が5刷となり、品薄だとお話も聞くのですが、東京近郊の書店員さんに是非作品をご覧いただきたく思い開催しています。ご覧いただいた感想は公式HPに随時アップしていく予定です。
いらっしゃるかどうか危ぶんでいたのですが、これがなかなか皆さんいらしてくれていて、原作の力をしみじみ感じてしまいます。



先日、ある方からスーツをいただきました。
洋服屋の息子なのにお恥ずかしい話ですが、あまりちゃんとした洋服を持っていません。
これを読んだら親が嘆くと思いますが…。

それで…というわけではないのですが、ある方がお遺しになったスーツを縁あっていただいたのです。

ある方とは、故・浦山桐郎監督です。

浦山監督とは、もちろん『キューポラのある街』や『私が棄てた女』『青春の門』の映画監督です。



お話によれば、浦山監督は海外の映画祭に出席されつときなどにオーダーメイドのスーツをお作りになっていたようで、亡くなった後、浦山さんの奥様から2着のスーツがフォークシンガーの高田渡さんのもとへ。
そして、渡さんが亡くなった後、人を介して私のもとへ、その1着がやってきました。
理由は、わたしが、痩せていて、背が高くから、ということです。
浦山監督の作品が好きです。『赤い文化住宅の初子』を作るときは、『キューポラのある街』を見返していました。『非行少女』を実は偏愛しています。

いただいたスーツは、大変よいスーツで、そして、わたしの体にあつらえたようにぴったりでした…。
着ると背筋が伸びます。「浦山」と刺繍がされているスーツです。
大切に着させていただこうと思います。



もう少し頑張ろうと思います。