『私は猫ストーカー』事始め〜その2

slowlearner_m2009-05-12




ハルミンさんから快諾はいただいたものの、この企画、どこに出しても好評の割には、なかなか立ち上がってくれませんでした。持ち込んだ会社が変わる度、骨子に変化はないのですが、ドラマ部分が多い方がいいという意見があったり、また逆に猫の映像が多い方がいいという意見があったりと企画は姿を変えました。


かなり当初から、撮影場所に決めた場所にいる野良猫や家猫の姿を映画の中に盛り込んでいく、という方向性はあったと記憶しています。
それから、猫のいる風景を通して、“東京”を撮る、というプランもすでにこの頃からあったはずです。



東京の町は、すごい速度で変わっていきます。
良くも悪くも。
わたしは東京出身ではありません。
でも、この20年ぐらいの間に、めまぐるしいほどの変貌を遂げています。
学生時代から喫茶店が好きで、よく行く喫茶店がそれぞれの町にあるのですが、この数年で随分減ってしまいました。先日も神楽坂のスタジオに言った時には必ず寄る古い喫茶店があったのですが、そこも再開発なのか、その辺りがビルになることになって姿を消しました。学生時代から行っていたので、もうあのコーヒーが飲めないかと思うと、とても寂しくなるのです。


時間がたてば、町も、そこに住む人の顔も変わっていきます。
猫にしても同じことです。
いつも、いるいると思っていた道ばたの猫は、ある日突然姿を消してしまいます。
そして、2度と現れることはありません。



だから、「私は猫ストーカー」なのです、とハルミンさんは本の中で言っています。
「どんなに愛おしくても、ふれあえる時間は、ほんのわずかなのです」。


話が前後しますが、『私は猫ストーカー』のチラシの文章を書いた時に、そんな想いを込めて「みんないつかはいなくなってしまうから」と書きました。


企画は、浮いては消え、浮いては消えして、なかなか立ち上がりませんでした。
ところが、昨年の夏でした。とうとうこの作品が撮れそうな雰囲気になってきたのです。
しかも、当初企画していたそのままの形で…。
ある会社にいらして、今はその会社はお辞めになってしまったKさんのご尽力です。


この映画が撮れたのは、Kさん、あなたの力です。ほんとうにありがとうございました。



浅生ハルミン原作、星野真里主演、鈴木卓爾監督作品『私は猫ストーカー』は、7/4(土)よりシネマート新宿にてロードショー。その後、名古屋シネマテーク京都みなみ会館、広島・横川シネマ!!ほかにて全国順次公開です。