『私は猫ストーカー』事始め〜その3

slowlearner_m2009-05-13



今日は、『私は猫ストーカー』のマスコミ試写でした。たくさんの皆さんにいらしていただき、満員御礼。入りきれなかった皆さん、申し訳ありませんでした。
ハルミンさんがイラストを描かれた『人妻魂』の著者である嵐山光三郎さんや、脚本家の桂千穂さんが来て下さったり、ロケ場所にお借りした古書猫額洞夫妻がちょうど東京にいらしていた東京ロッカーズの伝説的なバンドであるミスター・カイトのジーンさんこと美咲歌芽句さんと来て下さったり、いつもに増して賑やかな試写室でした。



『人妻魂』(マガジンハウス刊)です。



こちらは美咲歌芽句さんの詩集『荒涼天使たちの夜』(思潮社刊)です。


浅生ハルミンさんの原作『私は猫ストーカー』はエッセイ集です。
その中に籠められたエッセンスを映画として結晶させるために、野呂邦暢さんの小説からヒントをいただきました。野呂さんは、長崎県生まれの小説家で、1974年『草のつるぎ』で芥川賞を受賞。『海辺の広い庭』『鳥たちの河口』『諫早菖蒲日記』などの小説や『小さな町にて』『王国そして地図』などのエッセイ集を遺して、1980年5月、42歳で急逝されました。

野呂さんの小説のことを知ったのは、その昔、SWITCHに掲載された川本三郎さんのエッセイからだったと思います。『鳥たちの河口』について書かれた文章でした。それからずっと彼の作品を読んできました。

ヒントにしたのは、野呂さんの小説『愛についてのデッサン 佐古啓介の旅』です。
この本は長らく読めない本で、古本屋さんで見つけるとびっくりするような値段がついていたりしたのですが、近年みすず書房から復刊されて、手に入るようになった本です。



大好きな小説です。

父親の跡を継いで古本屋となった青年と古本に秘められた人々の人間模様や心のあり方を推理小説仕立てで書いた傑作です。

余談ですが、古本好きだった野呂さんが東京在住の折に通った古本屋が、大森にありました。それは、山王書房という関口良雄さんという伝説的な方がやってらした古本屋さんです。野呂さんはエッセイに度々、その古本屋さんのことを書いています。先日、石神井書林内堀弘さんとお話をしていたら、野呂さんは、その関口さんの息子になったつもりで、この小説を書いたのではないか、と推論されていました。

ヒントですから、まんまではもちろんありません。しかし、素晴らしい小説です。是非読んでみて下さい。