サウンドトラック…。

slowlearner_m2009-02-15


昨年12月に開かれた市川準監督のお別れの会。
その会場では、市川監督のこれまでの映画やCMの名場面が流れ、ポスターが『BU・SU』から『buy a suit スーツを買う』まで飾られていました。そして、サウンドラックも。
先日の会議の時に、これまで市川監督の録音をつとめられてきた市川作品には欠かす事の出来ないスタッフである橋本泰夫さんが作って下さった、そのサウンドトラック集のCDをいただきました。


『BU・SU』にはじまり『buy a suit スーツを買う』までの17作品の曲がセレクションされています。
そして、ひとつひとつの曲の冒頭と最後には、必ず市川監督の「ヨーイ。スタート!」という声と、「カット」をかける声が入っています。時には、「カット」をかけた後で、「もう一度だな」とおっしゃったりします。
監督の「ヨーイ。スタート!」から『会社物語』の音楽が入るタイミングが絶妙で、曲のよさとも相まって、ちょっと泣きそうになりました。


しかし、こうして通して、市川作品のエンディングの曲を聴いてみると、分かりやすく情感たっぷりでありながら、決して深刻ぶりたくない市川監督の姿勢、照れ屋ぶりが感じらます。
もしかすると、どんな題材を扱っても、市川監督はどこかで“喜劇”であることを意識されていたのかもしれません。その“喜劇”というのも、ことさら滑稽ないわゆる喜劇なのではなく、普通に人が生きて、暮らしていることが、根本的に“喜劇”として捉えられているような、うろ覚えですがチェーホフが『三人姉妹』を“喜劇”だといったような、そう言う意味での“喜劇”ではあります。



どうひいき目に見ても、わたしたちの生は、滑稽なものです。
不格好で、出来損ないの形をしています。
その滑稽さを愛しむ事が、市川作品の核にあるのかもしれません。

そして、なぜか幾つかのサントラを聞きながら、空を見上げてしまいます。
市川監督の作品のように、もう少し広い視野で、世界を見てみたくなるのです。


このサウンドトラック集は、客入れの時にユーロスペースでの会場でも流れることになりそうです。


市川準事務所と市川準監督お別れの会事務局によるブログ『市川準監督のこと』が開設しました。
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