新しい予告編が届きました!

slowlearner_m2009-02-11


『buy a suit スーツを買う』の新しい予告編…といっても、劇場公開表記などの後付けが更新されたのですが、届きましたので。皆さんにもご覧いただければと思います。昨日のブログにも書いたヒサシの台詞も、この予告編の中に登場します。



2月の末には、河出書房新社から『市川準』が出版され、3月は、衛星放送と日本映画専門チャンネルの共同企画で『追悼・市川準特集』が放送され、3/21(土)からは、渋谷ユーロスペースで『市川準監督のこと 追悼・市川準監督レトロスペクティヴ』、4/11(土)には『buy a suit スーツを買う』の公開が渋谷ユーロスペースと梅田ガデーンシネマで始まります。同じ頃から、幾つかの海外の国際映画祭でも『buy a suit スーツを買う』が上映されることが決まっています。

ひとりでも多くの、そして新しいお客さんに、市川監督の作品を見ていただくことになればと、願わずにはいられなせん。


昨日のブログではありませんが、“東京”というキーワードで市川監督の作品を見直してみるのも面白いかもしれません。


府中に生まれた市川監督は、東京のいわゆる“下町”の風景は、どのようなものとして目に映っていたのでしょう。

『会社物語』(88)でハナ肇さんが演じる花岡が、自宅を東京の郊外に引っ越して目にする風景は、とても興味深く思います。定年後に住むことになった郊外の川の風景は、映画の物語とも相まってどこか寒々しく無機質な風景です。ここには、80年に川崎市ベッドタウンで起きた金属バット殺人事件のエコーがあるのもしれません…。



そう言ってみれば、『あおげば尊し』(05)の郊外の住宅地にも同じことが言えるのかもしれません。無機質な郊外の中で、在宅で迎えるひとりの老人の死とそれを見守る家族の情景。そして、死の意味が分からない少年…。


東京は、“下町”と呼ばれた場所から、郊外へ向けて肥大していきました。その年月の中で、わたしたちは何を失調させていったのでしょう。


そして、08年に撮られた『buy a suit スーツを買う』は、『東京兄妹』(95)を経由して、87年…およそ20年前に撮られた『BU・SU』と呼応しています。大阪から兄を捜しに来たユキが目にする“初めての東京”と、海のある故郷から神楽坂の叔母に預けられた麦子の“初めての東京”の風景。二人の少女の目に、東京の風景は、東京に生きる人々はどのように映っていたのでしょう? この間に“東京”の20年が横たわっているのだと思います。