市川準監督のこと

slowlearner_m2009-01-08


私は猫ストーカー』の撮影中、昨年の12/5に市川準監督とのお別れの会が開かれました。
その日は、撮影はなく諸準備ということになっていたので、俳優として『トキワ荘の青春』などにも出演している鈴木卓爾監督とお別れの会に参加させていただきました。
献花台には『トニー滝谷』のカメラマンでもある広川泰士さんが撮影した、市川監督のポートレート
大勢の皆さんが集まった盛大な会でした。
そこで顔見知りのカメラマン鈴木一博さんから声をかけられました。
一博さんは、安藤尋監督の『blue』や廣木隆一監督の『不貞の季節』『理髪店主の悲しみ』などでご一緒したカメラマンで、市川監督の作品『あしたの私のつくり方』の撮影を担当していらしたのです。
立ち話をするうちに、一博さんが言いました。
あしたの私のつくり方』の撮影中、市川監督が、エリック・ロメールのように映画を作りたい、と言っていたと。
「それが、『buy a suit スーツを買う』になったんだね」

ああ、そうだったのかと思いました。
海辺のポーリーヌ』や『満月の夜』『緑の光線』…。
エリック・ロメールは、低予算、少人数体制、ノン・スターという条件でもとで、しかし、とても豊かで、贅沢な、しかし攻撃的な映画作りをしています。
奥原浩志監督や安藤監督、鈴木卓爾監督もそんな映画の作り方について、よく話し合ってきたのです。低予算、少人数の映画作りは、決して大規模な映画の縮小版であってはなりません。その縮小版でない映画作りを、ぼくたちはまだ想像しきれていない。まだ想像力が足りないのだ、と。
『buy a suit スーツを買う』で、市川監督は、そのような映画作りを実験しようとしてたことを、一博さんの言葉から知りました。

「この作品は、
勢いだけで描いた“線”のような
「素描」「スケッチ」的なライブ感がある。

ドキュメンタリー色の強い描写で、
今までの市川作品とは違う匂いがある。

ヌーベルバーグが16mmのカメラを持ち、
外に飛び出してノーライトで映像を撮りはじめた当時の
“初心”のようなものが、
今回、自分の気持の中にもあったような気がする。」


市川監督から『buy a suit スーツを買う』に関して、いただいたメールの中に、そんな言葉がありました。