拳闘士の休息

slowlearner_m2009-10-12



市川準監督の遺作となってしまった『buy a suit スーツを買う』は、下記劇場で上映中です!


仙台フォーラム http://www.forum-movie.net/sendai/

佐賀・シアターシエマ http://ciema.info/index.php?itemid=1061

札幌・蠍座 http://www.minipara.com/hokkaido-mini/theater/sasori/



そして、京都みなみ会館では『私は猫ストーカー』上映中です。


京都みなみ会館 http://www.rcsmovie.co.jp/



バウスシアターでの上映記念「浅生ハルミン・プチイラスト展」も吉祥寺のOLD / NEW SELECT BOOKSHOP「百年」開催中!

10/10(土)〜10/30(金) http://www.100hyakunen.com/



素敵な本屋さんなので、お近くの方は是非入らして下さい。


最近は、めでたく河出文庫で復刊されたトム・ジョーンズの『拳闘士の休息』を読んでいます。訳は、岸本佐知子さんです。



面白すぎてなかなか前に進みませんっ! まだ二編目の「ブレーク・オン・スルー」を読み終えただけです。ベトナムの悲惨な戦場で、爆発音とスモークの中でトムは、まるで「プルーストのように」、戦場の奇妙な静けさの中にいながら同時にイリノイ州オーロラの南はずれの祖母マグの雑貨屋にいて、「祖母の膝の上にのっかっている」と感じます。


「店には買い物客も、そうでない客もやってきた。まだテレビのない時代だった。せかせかする人間など一人もいなかった。マグはおしゃべりで人を楽しませるのもうまかったが、一人で店を切り盛りする働き者でもあった。仕事はどんどん片づいていった。棚に品物を補充し、ストーブに石炭をくべ、洗濯物を洗って裏の駐車場に干し、食事を作り、四人の娘と数え切れないほどたくさんの孫を育て、泣きべそをかきながら店に迷いこんできたみなし児まで家族のように面倒をみた。祖母は、誰かが腹を空かせたり困っているのを放っておけなかった。大恐慌がきたときも、近所の人たちにひもじい思いをさせなかった。食べ物を“つけ”で売り、時には惜しげもなくただで配った。…長い一日が終わると、マグ祖母さんは大儀そうに階段を上がり、ベッドで脚にベン・ゲイ軟膏をすりこみ、祈祷書を読みながら眠りについた。」


ベトナムの戦場で、マグお祖母さんのことを思い出すことを郷愁と呼ばないで、何を郷愁と呼べばいいのだろう。この下りを読みながら、バスの中で泣きました。ほんとうに、トムだけでなく、ぼくたちはこんなふうに暮らしていたかったのだ、と思い、泣かずにはいられなかったのです。