谷根千のこと〜『私は猫ストーカー』事始め〜その10

slowlearner_m2009-06-07



キャスティング、スタッフィングなどの準備と平行してロケハンを始めました。
ひとりで自主ロケハンしていた時に、いろいろな要素から、この映画は東京の東側、かつての東京、下町と呼ばれた場所で撮影されるべきではないかと感じていました。
そこで、まず谷根千と呼ばれる、谷中、根津、千駄木をロケハンすることにしました。
久しぶりの谷根千は、ずいぶん風景が変わってはいたものの、路地が縦横無尽に走り、昔日の風景を残していました。
しかし、その向うに巨大なマンションを建設している姿も見えていたのです。
そして、この街の現在を映画の中に折り込む事が重要なのではないかと思ったのです。




先日、映画にも出演してたいただいた、谷中が地元の俳優である諏訪太朗さんが、『私は猫ストーカー』を試写でご覧になりました。

「谷中の映画になってるね」

見終わって諏訪さんにそうおっしゃっていただき、どんなに嬉しかったかしれません。
地域映画を作る事は、ある種のリスクを背負っています。もちろん映画の嘘はあるのですが、その街からかけ離れた映画を作っては、協力していたいだ地元の皆さんに申し訳がたちません。
絵はがき的な谷根千の映画を撮るつもりもないし「東京を撮る」と決めたのだから尚更です。


坂が多く、アップダウンがあるもの好ましく、撮影のたむらまさきさんが、もう歩きたくないとおっしゃるほど隅々まで路地を歩きました。

俳優猫を用意せず、地元の猫たちで猫ストーカーシーンを撮ろうと考えていたのですが、



いるいる。


根津権現では、野良猫がその後ろをついて歩く猫仙人(映画では品川徹さんが演じてくれました)にも出会いました。街をくまなく歩くうちに、もう映画の舞台はここしかないと思ったのです。

そのうち、たむらさんが、「いい場所がありますよ、そこに行きましょう!」とおっしゃいます。
ついていくと玉林寺というお寺でした、たむらさんは、「あれ、随分風景が変わっちゃったなぁ」と困惑顔です。

「いったい何の作品の撮影でいらしたんですか?」

「うーん、『竜馬暗殺』なんだけど」

黒木和雄監督『竜馬暗殺』は、1974年の映画です。




そりゃ、風景も変わってるって…。



撮影現場での鈴木卓爾監督と諏訪太朗さんです。