五反田。

slowlearner_m2009-02-08


先週末、中江裕司監督作品『真夏の夜の夢』の打ち合わせで、五反田へ行ってきました。
五反田は、もちろん現像所などがあり、よく降りる街です。


今日は、少し個人的なことを書こうと思います。


市川準監督の『buy a suit スーツを買う』のはじまりは、こうでした。
市川監督の事務所の方からお電話をいただき、市川監督が自主映画を撮ったと伝えられたのは、昨年8月の終わり頃だったでしょうか…。
いちもにもなく見せていただくことにした後、撮影だという市川準監督から丁寧なメールをいただきました。

そこには、ホームビデオコンテストの審査員をした際にもらった家庭用のHDカメラが優秀で、撮っているうちに、「映画のようなもの」を撮りたい衝動にかられ、日頃そのキャラクターが面白いと思っていたCMの仲間達に出演してもらって作品をつくったこと。未完成のものを見せるのは申し訳ないけれども、途中経過的なDVDを見て、意見や感想をもらえれば、と書いてありました。


その後、五反田の編集室でお仕事をしている市川監督と久しぶりにお会いしたのでした。
私は、その編集途中の『buy a suit スーツを買う』をDVD見て、不覚にも涙してしまい、お会いした時に「市川監督の映画の中で一番いいんじゃないですか?」と変な絶賛をして、監督が苦笑されたのをよく覚えています。


市川監督の出会いは、それほど古いものではありません。
トニー滝谷』の製作の時にお会いし、その後、『あおげば尊し』の時にも、ご本人からお電話をいただき、ご一緒しました。
あおげば尊し』の初日は、東京でも記録的な大雪で、テリー伊藤さん、薬師丸ひろ子さん、麻生美代子さん、市川監督とロケバスで移動しながらの舞台挨拶は、痛恨でもあり、また印象的な舞台挨拶でもありました。


書いているとキリがありませんが、五反田の編集室でお会いして、打ち合わせをしたのが、市川準監督とお会いした最期になりました。

実は、そうではなく、そのあと9月18日に五反田で『buy a suit スーツを買う』を本編集中の監督お会いするはずでした。
でも、その日は、ひとつ映画の撮影現場が終わったばかりで、たまっていた仕事に忙殺されていて、お断りしたのです。

しかし、本当は行こう思えば行けたのです。
急にその時間に入っていたアポイントがキャンセルされたからです。
でも、来週ご飯でもと言っていたので、行きませんでした。


市川監督は、その本編集を終えられた19日未明に急逝されました。


なんだか仕方がないことではあるのですが、五反田に降りるたびに、苦い気持ちが残ります。


五反田は、今すごい再開発で風景が一変しつつあります。



工事中の高層マンションは、こう撮ってみるとなんだか廃墟みたいに見えます。
東京を愛し、撮り続けた市川監督は、4月11日から東京と大阪で公開される『buy a suit スーツを買う』の中で、近年の東京の変化にふれ、少し苛立っているようにみえるのです。