ペーター・ツムトア

slowlearner_m2013-03-09



『火山のふもとで』を読み終わった後、ペーター・ツムトア『建築を考える』(みすず書房刊)を読んでいます。
建築には詳しいわけではないので、ペーター・ツムトアがどのような建築家なのか知っている訳ではありません。
しかし、この美しい、そして決して饒舌ではない本が語ってくれることは、とても示唆的です。


「新しい建物を建てることは、特定の歴史的状況に介入していくことにほかならない。すでにそこに存在していたものと有意義な緊張関係を築くことができるような性質を、新しい建物に付与することができるかどうか、それが介入の質を決める。」


「私が(ペーター)ハントケの考えを正しく理解できているとするならだが、ここで述べられているのは私にもなじみのある自覚、つまり人為的な行為によって創造される物からその人為性を取り去って、それを日常の、自然な事物の世界の一部にすることの困難さの自覚であるが、そればかりではない。あらためて、真実は物そのもののなかに宿っている、という信念なのだ。」


「私はカウリスマキ監督が自作の映画の登場人物にしめす共感と尊敬をすばらしいと思う。カウリスマキは役者を監督のあやつり人形にしない。コンセプトを表現するために役者を利用するのではなく、むしろ役者を映画のなかに置いて、その尊厳、その秘密を私たちに感じとらせる。」



(訳:鈴木仁子)