高橋悠治さんの仕事

slowlearner_m2012-03-23



今日の東京は雨でした。
相変わらずデスクワークと打ち合わせ。
衝撃の事実発覚も2件。
あっと言う間に一週間が過ぎ去りました…。



高橋悠治さんの『カフカ 夜の時間』(晶文社刊)です。
この写真は旧版で、みずず書房から増補版が出たばかりです。
若い頃から、といっても80年代ですが、ピアニスト、作曲家としての高橋さんのお仕事にずっと刺激を受けてきました。
特に『カフカ 夜の時間』は、繰り返し、ことあるごとに読み返し、未だに読めたと言う気がしない、わたしにとっては大切な本です。
先日もWebにアップされている高橋さんの「反システム音楽論断片」を読みました。

糸(threads)として
声の場 リズムと身体 音色と空間 自律と相互調整 口と耳の交換 隙間とずれ ゆりくずす システムを作らない抵抗 こころみのプロセス さまよう 息 ゆるめる かぞえないで感じる など 思いつくまま

まずは 声の場

がやがや 音にかこまれていると ほっとする

みんなの声 みんなちがう声が 同時にちがうことばをしゃべっている それがだんだんに静まったとき 合意が成立している 合意は沈黙 理解は沈黙 異議は ちがいは声になる のか

それぞれにちがう声 声のあいまに別な声 折り畳まれた同時発声の空間から 余白の多い奥行きのある空間へ 聞くための沈黙 会話の空間 平等な空間


このような文章で始まる「反システム音楽論断片」に、やはりとても刺激を受けます。

単線的な時間構成が
緊張と緩和をくりかえしながら頂点へと向かう
一方向の統制と拘束力をもつのに対して
水平組織は自発的参加を原則とする
ちがう声との出会いによってリズムは揺れ
軌道からわずかにずれていく
ずれが大きくなれば
畳み込まれた襞が内側に収まらなくなり
全体が組み替えられて 波が方向転換することになる
この変化は劇的ではないし 目立たないが
気づいた時には もう引き返せない地点にいる
複数の逸脱から合成されたベクトルを 外側から制御することはむつかしい


この「反システム音楽論断片」はとても腑に落ちたところが多く…この文章を繰り返し読みながら、映画作りのことを考えてみたいと思うのです。

http://www.suigyu.com/yuji/ja-archive.html

「反システム音楽論断片」は、このサイトで読むことができます。